こくおうさまのすきなひと
「まさかロア様、戦場に行くつもりですか?」

「うん。兄さんの命令でね。まあ、言われなくても行くつもりだったけど」


ロア様はあっけらかんとした表情で、そう話す。


そんな!国王様の弟であろう人が自ら争いに加わるなんて!!

しかもまだロア様は18歳よ!?


「ど、どうして!?駄目よ!!行っちゃいけないわ!もし命を落とすような事でもあったら……!!」

「心配しないで姉さん。こう見えても小さい頃から、剣術や戦術を叩き込まれてるんだ。将来は僕がこの国を守り、兄さんが国を治めるようにと、そう父さんから言われていてね。実は兄さんも剣術の腕前は素晴らしいものだけど、流石に国王自ら行く訳に行かないだろう?だから俺が」


「でも……!ロア様に何かあったら私……!」


「大丈夫、僕が行くからには早急にケリをつける。その為に既に戦術は練ってあるんだ。まだ若いからって見くびらないで欲しいな。自分で言うのもなんだけど、僕って結構優秀なんだ」


ロア様は自信満々に言うけれど、素直に受け取る事が出来ない。

私の不安は増すばかりだった。

そんな私に、ロア様は笑みを零す。


「そんなに悲しい顔をしないで。必ずいい知らせを持って生きて戻って来るから。言っとくけどこの国の騎士団は最強だからね?そこに僕の頭脳が加われば敵なしだよ」

「ロア様ったらこんな時にそんな冗談を……、もう……」

「本当だよ?正直早く暴れたくてしょうがないんだからさ。アーハイムを敵に回したらどんな目に合うか、思い知らせてくるよ。……だから、姉さんはどうか兄さんを信じて」


最後の言葉に、ズキリと胸が痛む。

ロア様は軽く手を振り、そして部屋を後にした。
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