こくおうさまのすきなひと
――部屋の前へと着いた。


一息置いて、騎士が部屋の扉を叩く。


すると扉の向こうから、国王様の声が聞こえた。




「――誰だ」

「アルス様、私です、ミネアです!お部屋へ入ってもよろしいですか!?」




騎士が答える前に、すかさず私がそう言った。


しかし、それに対し国王様からの返答はなく、辺りには少しの静寂が流れる。


会ってくれないかもしれないと、不安に駆られた。


だが、扉はゆっくりと開かれた。




「……落ち着いたら行こうと思っていたんだが、わざわざ来てくれたのか」


国王様の姿を久しぶりに見て、私は言葉を失くした。


とても疲れ切ってやつれた顔。

その姿も、とても弱々しい。


正直ここまで弱り切った姿だとは思わなかった。

あまりの変貌に、胸が痛む。
< 177 / 220 >

この作品をシェア

pagetop