こくおうさまのすきなひと
「ちょ、結婚ってどういうことだよ!父上!!」
話を聞いて、案の定アレイズは声を荒げた。
レイラは理解出来ないのか、はたまたショックだったのか、目を丸くして微動だにしない。
アレイズはテーブルから身を乗り出し、今にも掴みかかんばかりの勢いだった。
そんなアレイズに対し、父と母は怯むことは一切ない。
「つまりそういう事だよ、アレイズ。ミネアはこれから西のアーハイムへと嫁ぎに行くことになった。アーハイムの正妃となるのだ」
「アレイズも分かるでしょう?これは国の存亡が掛かっているのです。ミネアにはとても申し訳ないと思うけれど、これしか方法がないの」
父と母は宥めるように、冷静にアレイズに話した。
しかし、アレイズの怒りは収まらない。
「だからって急すぎるだろ!なんでもっと早く言わなかったんだよ!!」
「言ってたらお前、この話をないものにしようとするだろうが。お前の行動くらいお見通しだ」
「うぐ……、そ、そんなの当たり前だろう?こんな結婚はいくらなんでも残酷過ぎる!姉さん、それで本当にいいのか!?」
燃えるような青い瞳が私へ向けられる。
ズキリと胸が痛んで、「いいわけない」って口から出そうになった。
だけど、それは絶対に言えない。
だから必死に笑顔を見繕って答えた。
「これは王女としての定めだから。あなたも次期国王なんだもの、分かるでしょう?」