こくおうさまのすきなひと
ミネアは寝台から立ち上がって、私の前に来ると縋るように懇願した。

いますぐにでも弟に会いたいという気持ちが強いのだろうか。

……であれば、先程見せたあの表情は?


いずれにせよ、ここまでお願いをされて断るわけにもいかない。


「……わかった。だが少しでも気分が悪くなったら言うのだぞ?」

「ありがとうございます……!」


ミネアは長いストールを羽織ると、私の横に立ち腕に手を絡めた。

また心臓が激しく高鳴る。

「で、では行こう」



ミネアを気遣うように、ゆっくりと歩いた。

その表情は依然冴えず、厳しい表情のままだ。


アレイズに久しぶりに会えるというのに、どうしてそんな顔をしている?


聞きたい事は沢山ある。

しかしそれは、アレイズに会えば直ぐに分かるのだろう。


そう思い敢えてミネアには聞く事はせず、無言でその道のりを歩いた。
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