こくおうさまのすきなひと
「……」
私は目の前に立つひとりの女性を見たまま、動けなくなった。
決して絶世の美女というわけでもない。
むしろ、どこにでもいるような、平均的な容姿の女だ。
――しかし、なぜだろう。
私を見つめる彼女の瞳が、やけに澄んでいて。
それでいて実に艶めかしい。
私の心がどくりと脈打った。
そして全身が痺れたような感覚に陥る。
その時、私は悟ったのだ。
……ああ、私は彼女に恋をしてしまったのだ、と。