こくおうさまのすきなひと

部屋に戻り、行くための支度をする。


ここからアーハイムまでは2日ほどかかる。

山の頂には泊まることの出来る小屋があり、そこで寝泊まりしながら目指す事になっていた。


山の中は盗賊や野生の獣などがいて、危険を伴う。

万が一のために、動きやすく目立たないドレスを着て、布で顔を隠し、胸元に短剣を忍ばせた。


もちろん私を守るために、国の騎士達も同行して万全の体制をとっていたが、何があるか分からない。

だから王族の者が他の国へと行く場合は、必ず短剣を持たなければいけなかった。



その胸元に忍ばせた短剣は、最悪の場合、自らの命を自分自身で終わらせるもの。


盗賊に襲われ身を汚されるよりは、自死する方が王家の名誉に傷が付かないためだからだ。



私ひとりの命よりも、家を、そして国を守る。


それもまた、王族の人間として生まれた定め。





全ての準備を終え、私は神に祈る。


どうか無事にアーハイムへと着くことが出来ますように、と。



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