こくおうさまのすきなひと
――そして、夕刻。



「アーネスト王女のご一行がお着きになられました!」

城の門番のひとりが私のいる王の間へとやって来て、声を上げた。

ロバートは門番と共に、アーネスト王女一行を迎えに部屋から出ていく。


ついに、この時が来たのか……。


玉座に腰を掛け、私は大きく息を吐いた。


やけに長く感じられる時間。

王女を待つ私の表情は暗く曇り、冴えないものになっていただろう。

これから死を迎えるその時まで、私は毎日苦痛に耐えなければならないのだ。


と、その時までは、思っていた。


――そう、彼女を目にするまでは。





先の大きな扉がゆっくりと開かれる。


「アーネスト国第一王女、ミネア様がお入りになられます」


ロバートの声に、中にいた侍従と騎士が扉の方へ身体を向け、頭を下げる。

私は崩していた姿勢を正し、しっかりと前を見据えた。

ロバートを先頭にして、異国の塊が徐々に近くへと向かってくる。


憂慮の気持ちが大きくなる。

これが夢であったなら、と叶いもしない思いが駆け巡っていた。



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