こくおうさまのすきなひと
綺麗に纏められたブラウンの髪、丸く大きな瞳とぷっくりとした唇。

健康的で艶やかな肌が、紫のドレスと良く合う。

胸元に散りばめられた宝石が、胸が上下で動くたびにキラキラと輝く。


決して絶世の美女というわけでもない。

むしろどこにでもいる、普通の女。

国王になる前は、地味で映えないと敬遠していた部類の女。


なのになぜ?

やけに澄んだターコイズブルーの瞳が妙に艶めかしく、目が離せない。

どくりとなった心臓は、そのままの激しさを継続したまま鳴り続け、汗が出そうなほどに身体が熱い。


な、なんだこれは。


なぜこんなに心臓がうるさいのだ!?



突然の身体の変化に、戸惑ってしまう。

見つめたまま何も話せなくなってしまった私に、ミネアは心配そうに声を掛けた。


「どう、なされたのです?お体の調子でも悪いのですか?」


また、どくりと心臓が鳴った。

頭のてっぺんから雷に打たれたように、全身が痺れて仕方がない。


「な、何でもない。気にしないでくれ」

そう返すのがやっとだった。

< 32 / 220 >

この作品をシェア

pagetop