こくおうさまのすきなひと
先程までの憂慮など、どこへやら。

その時の私は、身体の変化に戸惑いつつも、気持ちはやけに舞い上がってしまっていた。


この感覚は、女と心通わせるまでの過程のものと似ている。

しかし、あの時よりももっと激しく、熱い。



……そういえば、昔、心通わせていたある女が言っていた。


『恋というものは、心の内が熱く燃えるもの。
 
 それが熱くなればなるほど、その恋は本物であると言えます』

と。



激しい胸の高鳴り。

胸の内で燃えるような感覚。


傍へ行きたい。

その手に触れたい。

私の身体の中へと包み込みたい。


今までは微塵も感じなかった欲望が、溢れ出てしまいそうになる。




その時、私は悟ったのだ。


これは、恋なのだと。




……ああ、私は。


一目見ただけで、彼女に恋をしてしまったのだ――……。


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