こくおうさまのすきなひと
ようやく一息付けた。
本当に今まで心休まる所がなかったもの。


慣れない山小屋での寝泊まりに加え、ほぼ一日中馬車で揺られ続けること2日。

最初はまだ動きやすいドレスだったからよいものの、今日の朝は国王様と会わねばならない為に、化粧をし、ちゃんとしたドレスを着て馬車に乗らなければならなかった。

コルセットで締めつけられた状態で、約半日以上馬車に乗るのは正直辛い。

居眠りにも苦しくて居眠りも出来ないし、寝不足と連日の疲れからか、少し車酔いもしてしまった。


アーハイムに着いたら着いたで休む間もなく、儀式をしなければならなかったし。



旅の疲れと緊張と。

色々なものが入り混じって、既に私の身体は既に満身創痍。

このまま柔らかなシーツに包まって寝られたら、どんなに幸せかしら。



身体をグッと伸ばし、部屋の大きな窓から外を覗く。

既に陽は落ち、漆黒の闇に月だけがぽっかりと輝いていた。

その光景は、アーネスト城の自室から見るものと何も変わらない。


だからこそ、寂しくなった。


今頃、家族はどうしているだろう。


レイラは寂しいと泣いていないだろうか。

そしてアレイズは、良からぬ事を考えてはいないだろうか。


昨日までは笑い尽きる事なく話し、賑やかだった私の周りが、今ではこんなにも静か。


あの場所に戻りたい。

――帰りたい。


来たばかりだというのに、こんなにも切なくなるなんて。


涙が溢れる。

本格的に泣いてしまったら止まらなくなると思って、必死に堪えた。


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