こくおうさまのすきなひと
食堂へ行くと、大きなテーブルに所狭しと料理が並んでいた。

料理からは湯気が立ち、食欲をそそる香りが漂っている。

疲れて食欲のない私だったが、その香りに自然とお腹が鳴ってしまった。

私は慌てて、お腹の部分を手で押さえた。


「どうした?腹でも痛いのか?」

「い、いえ。何でもありません。お気になさらず」


どうやら音は国王様に聞こえてないらしい。

私はホッと胸をなで下ろす。


国王様は自ら椅子を引いて私を座らせ、私の右隣の上座の位置に座る。

そして目の前にあるグラスに深紅の液体が、城の入り口で私達を出迎えてくれた、ロバートによって注がれた。


「では乾杯しよう。はるばるこのアーハイムまでよく来てくれた。とても感謝する」

「いえ、こちらこそ、これほどの温かな歓迎を感謝致します」


グラスを合わせ、そのまま口に運んだ。

甘酸っぱい濃厚な果汁が、すうっと身体の中心へと落ちていく。


「この国で採れるイヴァンの実を、そのままジュースにしたものです。ご安心下さい、ミネア王妃のものにはアルコールは入っておりません。いかがですか?お口に合いましたか?」


「ええ、とても美味しいです。ありがとう、ロバート」

そう言うと、ロバートは優しく微笑んだ。

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