こくおうさまのすきなひと

ふと国王様を見る。

国王様は、グラスに入っていたお酒を一気に飲み干したらしく、既にグラスは空っぽになっていて、お代わりを要求していた。

ロバートはそんな国王様に対し一瞬眉毛を上げたが、すぐに元の位置に戻り、空になったグラスにお酒を注ぐ。

そしてグラスを持ったまま、私に視線を向けた。


「遠慮せずに食べよ。長旅で腹も減ったろう」

「は、はい。お気遣いありがとうございます、アルス様」


少し微笑んで国王様に言う。

すると国王様は、慌てたように勢いよく目線を逸らして、またグラスのお酒を一気に飲んだ。


国王様は一切料理に手を出さず、お酒ばかり飲んでいる。

そんな国王様の行動に、私は少し心配になった。



……大丈夫かしら、国王様。

お酒以外、まだ何も口にされてないわよね?

お酒の強い方でも、空腹にアルコールは良くないと思うけど。



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