こくおうさまのすきなひと
部屋にひとりになったところで、私は頭を抱え大きくため息を吐く。
しかし、とんだ失態を晒してしまった。
まさかミネアを前に、意識を手放してしまうとは。
彼女はどう思っただろう?
こんな情けない姿を晒して、幻滅などしてしまっていないだろうか。
そう考えると痛む頭が、より強さを増す。
こんなはずではなかった。
自分の中ではもっとこう、胃もたれがしそうなくらい甘い言葉を掛けて、気の利く行動をするはずだったんだ。
それがどうだ、彼女を目の前にしては。
頭の中で考えていた事も全て消えて無くなってしまう。
自分でどうしたらいいか分からなくなって、最低限の事しか話せないし、行動に至っては正反対の事ばかりだ。
それだけミネアの存在が恐ろしくも尊いものである事。
心の中では早く自分のものにしたいと願うのに、全くと言っていいほど動けない。
「お待たせしました、お水です。ゆっくりと飲んでくださいね」
部屋へ戻ったロバートは、水差しからコップに移し差し出す。
それを受け取ると、グッと飲み干した。
「どんな武器や魔術よりも強力なものが、この世にあるとは知らなかったな。なあ、ロバートよ」
「……?何を仰っているのか全く理解できませんが」