こくおうさまのすきなひと
「すまない。少し疲れてしまった。休憩時間が欲しい」
「いけません。殿下には休む時間などないのです。まだまだこれだけ覚えなければいけないことがあるのですよ!?」
ロバートは机に置かれた書物の山を、手で叩きながら言う。
さすが父に一目置かれ、信頼を得ていた男。
普通であれば国王の言葉は絶対なのだが、ロバートだけは別である。
私の我儘に、一切引くことはない。
ロバートの手が置かれた一冊一冊が厚い本の山を眺めて、私は大きくため息をついた。
国王というものが、こんなに大変なものだとは知る由もなかった。
確かに、私が夜な夜な遊び呆けていたときも、父は常に部屋に篭り勉学に勤しんでいた。
私はそれを横目に、好き勝手していた。
両親やロバートに何回注意されようが、止めなかったのは私だ。
いずれ私も、父と同じようにやらなければいけないと分かっていた。
けれど、私はまだ時間があると勝手に思い込んで、遊び呆けていたんだ。
国のため、国民のため。
その努力を怠らなかった父は、民衆から愛された国王であった。
この国の長い歴史を見ても、歴代の国王は皆このような知識と情報を頭に叩き込み、それを駆使して国を統括していたということか。
こんなことになるのなら、もう少し真面目に取り組んでおくべきだったと、今更ながらに後悔する。