こくおうさまのすきなひと
***


その時間は刻々と近付いている。
だが、その事で悩んでいる暇などなかった。


いつものように公務をこなしながら、開いた時間で勉強。

ミネアがこの国へ来ても、私の毎日はほとんど変わらない。


だが、それももう少しで大きく変わる。


貴族達との接見や、外遊、そして時折行われる、国をあげての夜会やパーティー。

そういった場では必ず、ミネアと同伴となる。



ミネアと結婚するにあたって、ロバートから強く言われた言葉があった。



それは、"人前では必ず、仲睦まじい姿を見せなければならない"と言う事。



例え裏では上手くいってないとしても、決して表ではそれを見せてはいけない。


なぜなら、上手くいっていないと分かられれば、それに付け込んで良からぬ事を画策する者が出てくるからだ。


現に昔、とある国の国王夫婦が険悪な仲で、それを知ったある貴族が王妃にけしかけ、国王に毒を盛り殺してしまったという事件がある。


それはすぐに明るみに出て、王妃とけしかけた貴族はそれぞれ死をもって処されたそうだが、しかし、そういった良からぬ事が私にはないとは言えないのだ。


ミネアに限っては、そんな事をするはずはないと思っているし、思いたい。


けれど、感情だけでは国王は務まらない。



常に細かな部分に気を張って、日々を生きていかなければならないのも、国王の大事な使命のひとつであった。


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