こくおうさまのすきなひと
墓穴を掘ってしまい、言葉に詰まってしまう。

ロバートは呆れたようにため息を付いた。


……仕方ないじゃないか。

私にとっては、何よりも重大な問題なんだぞ?

顔も碌に見れやしない、気の利いた言葉すら緊張して、話す事も出来ない。

今日の夜だってミネアを抱くどころか、触れる事すらまともに出来るかどうか、分からないというのに。


「一体どうしたっていうのですか、国王様。どうしてそんなに取り乱しているのですか。女性を扱うのは初めてではないでしょう?」

「そ、そう、なんだが」

「じゃあ、どうしてです?お話し下さい。私と国王の仲でしょう?いつまでもそのような状態では、国王として務まりませんよ?さあ!」

ロバートは私に詰め寄る。

この状態をロバートに隠しておくのは、もう不可能だと思った。

だが、その気持ちを言った所で分かってくれるだろうか?


ロバートはもう35歳をとうに迎えているというのに、結婚をしていない。

これまでに浮いた話ひとつ聞かない。

こう言っては失礼だが、人を好きになった事があるのか?と思うほど、異性に対して淡白な奴だ。

だから私の心の内を伝えて、どんな反応をするのかとても不安になる。

『ああ、そうですか。……で?』

と言われるのがオチだろう。


しかし言わなければ、ロバートはしつこく問い詰めるはずだ。


……仕方がない。

言うしかないか。


私は意を決した。

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