こくおうさまのすきなひと
多分、これほどまでに不安に思うのは、"拒絶されたら"という恐怖があるからだ。


嫌われたらどうする?

私の全てを否定されてしまったら?


好きで緊張するのはもちろんあるが、加えてその恐怖が常に心のどこかにあって、どうしても普通に出来ない。


正直、こんなに自分が腑抜けな男だとは、思ってもいなかった。

本気で好きになった女性に、これほどまでに弱いとは。


「純愛ですねぇ……、国王。心が何故か温かくなりました」


そう言って、普段私の前では笑う事などほとんどないロバートが、笑顔を見せた。

純愛と言われ、少し恥ずかしくなってしまう。


「笑うな、ロバート。柄にでもないのは分かっている。だがな、私はとても悩んでいるのだよ」


「しかし良かったではありませんか。愛のない生活を送る国王夫妻も多々いる中で、そのような気持ちを抱かれた事は、今後の国の為にもとても良い事です。大丈夫、その気持ちは必ずミネア王妃に伝わります。なぜなら今の国王は誠実なお方ですから」


「今のっていう言葉が少し気にかかるが、……しかしロバートにそう素直に言われると、どうも居心地が悪いな」


あまりにも考えていた事とは正反対の反応に、私はつい、ロバートにそう言ってしまった。

ロバートは少しムッとした顔を見せる。

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