こくおうさまのすきなひと
「……しかし、ここ毎日ただひたすら難しい話に耳を傾ける毎日でしたから、少し気休めのお話でもした方がよろしいでしょうかね」
ほとほと疲れ果てていた私を見かねてか、珍しくロバートは厳しい表情を少し和らげ、私に向ける。
ロバートの表情に、少し肩の力が抜けた。
「そうしてくれ。その方が助かる」
浅く腰掛けていた椅子に、深く座り直して身体を寛げた。
「では早速。アルス様はアーハイムから東へ山をふたつ越した先の、アーネストという小さな国を存じておりますか?」
「アーネスト……。ああ、あの鉱物で財を成している小さな国だな?」
「そうです。アーネストが隣国のフライムに狙われていることもご存知でしょうか。フライムはアーネストの国とその鉱物が狙い。鉱物は加工すると強力な武器にすることが出来ます。それもあり一触即発の状態が続いているのです」
「ほう……」
なんともきな臭い話だ。
フライムは最近もある国を陥落させ、自分達の国の一部としたばかり。
フライムに近い国はかなり戦々恐々としていると聞いた。
確かにアーネストは狙われても仕方のない国。
国の面積もはるかに小さく、鉱物のお陰である程度の軍力はあるが、国をいくつか陥落させてきたフライムからしたら、それほど恐れる必要もないだろう。
安定して鉱物が採れる土地の確保。
フライムからすれば、喉から手が出るほどに魅力的だろう。