こくおうさまのすきなひと

胸がズキリと痛む。


私の事が好きではないのはよく分かっているし、私だって同じ気持ちだけれど、あからさまにされるとやっぱり心が痛い。


国王様を見る事が辛くなって、料理に目線を落とした。

涙が溢れそうになるのを、唇をかみしめて堪える。



「では、頂こう」


国王様の声で、食事は始まった。

既に食欲は消え失せ、食べる気も起きないのだけど、変に心配されるのも嫌で無理矢理口に運ぶ。


……味がしない。


美味しいはずなのに、全く味を感じられなかった。

なかなか飲み込めなくて、スープやジュースで流す。



その間も国王様との会話はなく、たまに食器の音がするだけ。

とても空気が重く感じられて、居心地が悪くて仕方なかった。



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