こくおうさまのすきなひと
――コンコン。

扉を叩くする音が聞こえ、その音を聞いた瞬間に身体が強張った。


……国王様だわ。


小刻みに震える手を、隠すように胸元でグッと握りしめる。

ティアが扉を開け、そこには案の定国王様が立っていた。


「お待ちしておりました、国王様」

ティアが国王様に一礼をし、部屋へと招き入れる。

そして国王様が部屋の真ん中まで行ったところで、ティアは私達に再度軽く一礼をする。


「それでは私はこれで失礼致します。もし何か用がございましたら、この呼び鈴を鳴らして下さいませ」


そう言って部屋を後にした。



しん、と部屋の中が静まり返る。


衣服が擦れる音がしっかりと聞こえるほど、とても静かな空間。

緊張で激しく鳴る心臓の音が、国王様にも聞こえてしまうかと思うくらいだ。


「待たせてしまってすまないな、ミネア」

そんな静かな空間に、国王様の声が響いた。


透き通るような、テナーの声。

トクン、と心臓がまた別な動きをする。


「いえ、そんな事は……」

国王様は、ゆっくりと私の前に歩を進める。

途中、着ていた軍服の上を脱ぎ、真新しい白のソファーの背もたれにそれを掛けた。


「緊張をしているのか?」

「……それは、もう」

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