こくおうさまのすきなひと

見下ろす国王様の瞳に耐えられず、目を逸らす。

どくどくと心臓の動きは激しいまま。

胸元で握っていた手はとっくに体温を失っている。


「ミネア……」

国王様は小さく私の名を呟くと、優しく両肩に手を乗せた。


身体がびくりと反応する。

振りほどいてしまいたいと思ってしまうが、ハッとある言葉を思い出す。


"拒んではなりません。全ては殿方の思うままに"


それは家庭教師に教えられた事だ。

身体に触れられたら、拒否をせず身を委ねる事。

相手の気分を害さない為だ。


ここで国王様の機嫌が悪くなってしまっては、元も子もない。


……そう。

少しの間我慢すればいいだけ。


これは国の為よ。

私はアーネストの王女。
この程度で逃げ出すような女じゃない。


そう思い、目をギュッと瞑って国王様の行動を待った。

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