こくおうさまのすきなひと

その時間は、やたらと長く感じられた。

覚悟を決め、目を瞑ったと言うのに、心が折れてしまいそうになる。


手は氷のように冷たい。
足も立ち上がれないほどにがくがくとしている。

国王様の手が置かれた肩の部分だけが、やけに熱を帯びているだけ。


国王様の吐息がかかるものだと思っていた。

私の身体が国王様の身体と共に、後ろの布団に埋まるのだと思っていた。

そして、そこから囚われてしまうものだと……。




けれど、一向に国王様は私の肩に手を置いたまま、動く気配がなかった。

肩の部分がやけに熱く感じるだけだ。



私は恐る恐る目を開けた。


国王様は、じっと私を見つめている。


目鼻立ちの整った顔で、ただじっと。

< 70 / 220 >

この作品をシェア

pagetop