こくおうさまのすきなひと

「……アルス様?」

思わず声を掛ける。

私の声に、ハッとしたような表情を浮かべると、肩に置いた手をスッと放した。


「……寝よう」

そしてそう一言呟くと、私を追い越して寝台の奥へと行って、布団の中に入ってしまった。


……え?


まさかの出来事に、呆気にとられる。

慌てて国王様の方を向くと、国王様は寝台の端で背を向けて横になっていた。


「あ、アルス様?」

「これからずっと一緒なんだ。なにも今焦って初夜を迎える必要もないだろう。ゆっくりでいい、ゆっくりで」

国王様のまさかの言葉に愕然とした。


う、嘘お……。

私こんなに覚悟決めたのに……!?


「いえ、あの、アルス様。それでは色々と示しが……」

「そんな事関係ない。これは私達夫婦の問題だからな。大丈夫、襲う事はないから安心して隣で寝るんだ」


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