こくおうさまのすきなひと
まあな。
自分でも、自分のヘタレぶりにたいそう呆れているよ。
けれど、あの時。
肩に手を置いた時、微かに震えるミネアを感じて、どうしてもそこから先に進む事が出来なかった。
あの震えは恐怖や、不安から来るもの。
それを私が取り除く事が出来るのかと考えたら、今の自分では出来ないと思ってしまったんだ。
あのままミネアを抱いてしまったら、我を忘れて彼女を求めてしまうだろう。
止めて欲しいと懇願されても、それを受け入れられず、ただひたすら自分の欲望だけを満たそうとする悪魔になってしまうに違いない。
それがとても怖かった。
あのしなやかで、傷ひとつない美しい身体に、そして心に大きな傷を作ってしまったら……と考えたら、どうしてもそれ以上は出来なかった。
だからあのタイミングで触れる事を止め、早々に布団へと潜り込んだんだ。
もちろん、そのまま寝られる訳がない。
ミネアを背中で感じながら、安心させるようにわざと寝息を立てた。
その間も、ずっと頭の中は悶々としていて……。
焦る必要はないという思いと、いつまでこの状況に耐えられるのかという思いで交差していた。
好きだからこそ、大事にしたい。
でも、自分の想いは募るばかりだ。