こくおうさまのすきなひと

「だいぶ、きな臭さが増してきましたね、国王」



ロバートは厳しい表情を浮かべて言った。

だが、私はあくまで冷静に答える。


「ああ。彼らもアーハイムが同盟を結ぶとは思ってもいなかったのだろうな。逆に考えれば非常に焦っているのだと思うぞ。普通ならば我が国を敵に回す事は自殺行為にも等しいと、争いを仕掛けるなど考える事もしないだろうからな」


なにせ、アーハイムは世界の国の中でも1、2を争うほどの大国だ。

騎士や兵士の数もフライムに比べたら桁が違う。

フライムの軍だけでアーハイムに争いを仕掛けても、到底無駄に過ぎない。



しかし、ロバートは私の言葉に安心を見せる事はない。


「しかし油断は禁物です。窮鼠猫を噛む、と言います。この国と同盟を結んだ事が分かってもなお、そのような行動に出るという事は、もしかしたら何か秘策があるのかもしれません。ここは慎重に事を進めなくては」


「……そうだな。軽く考えず、逐一動向を見極め、臨機応変に対応しよう」


息を大きく吐き、椅子から立ち上がると、窓から外を眺めた。

外は既に騎士達が慌ただしく動き、アーネストへ向かう為の準備を進めている。



……確かにロバートの言う通りだ。

同盟を組んだと分かっても、それでも軍を配置するという事は、何かあちらにとって勝算があるのかもしれない。

軍力が充実しているからと言って、安易に考えるのは危険だろう。



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