こくおうさまのすきなひと
その震えを少しでも止めてやりたい思った。
ちょっとでも不安を取り除く事が出来たなら……。
私は無意識に手を伸ばし、カップの取っ手に掛けられたミネアの手の上に重ねる。
その手は氷のように、とても冷たくなっていた。
ミネアは少し驚いたのか、身体を少し跳ねらせる。
「大丈夫だ、ミネア。……私を、この国を信じなさい。そなたがその身を呈してまで、母国を守る為にこの国へとやって来たんだ。必ず約束は守ろう。何があろうともアーネストは私達の手で守る」
「アルス様……」
しばしの間、私達はそのままで見つめ合った。
震えていたミネアの手はいつの間にか止み、徐々にだが温かさを取り戻し始めていた。
……なんて美しい瞳なのだろう。
その瞳で見つめられると、石になってしまったかのように、動けなくなってしまう。
それはまるで、晴れた穏やかな日の、透き通るような海。
いつか、二人で……、いや、私とミネアとの間に生まれる子と共に。
美しい海を眺めながら、ゆったりとした一日を過ごす事が出来たなら、どれだけ幸せなのだろうか……。