こくおうさまのすきなひと
「……アルス様、どうなされたのですか?」


私がミネアの手の上に重ねたまま、じっと見つめて動かないので、ミネアは心配してなのか声を掛けた。

その声にハッと我を取り戻し、重ねていた手を慌てて外す。


「い、いきなり変な行動をしてすまなかった。ミネアの手が震えていたのでつい……」


特に変な意味はないのだ!と必死に説明する。

私の慌てっぷりに、ミネアは淡い笑みを見せた。



「謝らないで下さい、アルス様。アルス様のやさしさに触れて、とても安心しました。ありがとうございます」


ミネアの笑顔に、胸の高鳴りが収まらない。


こんな状況でも、こんなになってしまうのだから、私は相当重症だ。



高鳴りを押さえるように、咳払いをする。


ああ、そうだ。

もうひとつ、ミネアには話さねばならない事があった。
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