こくおうさまのすきなひと
「……それで、だな。こんな時にこのような話をするのも何だが、実は来週にこの城で夜会が開かれる。それに私達も参加する事になった」
「夜会ですか……」
「ああ、そうだ。あまり気が乗らないかもしれないが、ミネアが王妃となっての初の公務だ。この国の貴族にそなたを知ってもらう為の重要な会でもある。どうか理解して欲しい」
確かにいつ争いが起こってもおかしくはない状況ではあるが、それはアーネスト国領内での事。
この国はまだ平和だ。
よっぽどの事がない限りは、夜会は中止にはならないだろう。
ミネアの表情は少し曇ってしまったが、公務と聞いてか軽く頷く。
「……ええ。王妃としての重要な公務ですものね。ましてや私はこの国の人間となった身。出ないという選択肢はございません」
ミネアの言葉に、少しホッとする。
「ありがとう、ミネア」
「いいえ。むしろ、気を遣っていただいて申し訳ありません」
「アーハイムでの事については、逐一状況が分かり次第ミネアにも報告する。その方がそなたも安心するだろう?」
「ありがとうございます、アルス様。とても助かります」
そう言って、ミネアはまたフッと笑みを浮かべた。