こくおうさまのすきなひと
緊急事態。
やむを得ない事だと、ロバートは言いたいのだろう。
国の平和を守る為。
どうあがいても、この話が無くなる事はない。
国王というのは、これほどまでに思い通りにならないものだったのか。
これは、国王としての義務。
国の為に、私の心などないものにしなければいけないとは……。
思わずため息が零れる。
しかしロバートは顔色ひとつ変えることはなかった。
「……分かった。納得いかないが、仕方ないな」
「理解のある国王で安心しました」
「で?いつその王女はこの国へ?」
「7日後に参ります。正式な婚儀は半年後となりますが、簡易的な儀式は受けていただきます」
7日後……。
すぐじゃないか。
「早すぎる。もう少し気持ちの整理を出来る時間を与えられないのか」
「なりません。王女が来てからでもそれは出来るでしょう」
「……」
その後ロバートは、「息抜きの時間は終わりです」と言って、またつまらない話を再開した。
しかし突然の結婚の話に、私の頭の中はそればかりになってしまい、全く頭の中に入らなくなってしまったのは言うまでもない。
――国の為の結婚。
仕方のない事とはいえ、今の私には到底受け入れられるものではなかった。