ブルー・ワルツ
フリージア

はじめて彼を目に映したのは小学校4年のとき。


同じクラスの斜め前の席。

猫背でまるっこくてぼーっとしてる姿はなにかふけっているようでなにも考えていないんだろうなって思った。
それだけ。



はじめて言葉を交わしたのはその半年後くらい。
プリントを後ろに回すとき 彼は相変わらず窓の外をぼけっと見つめていて、気づかない


「夏川くん」

『…ああ。ごめん』



今まで1度も口に出すことのなかった彼の名を呼んだ。



中学に上がって、今度は同じ委員になった。

あれ以来これというほどの接点もなく、顔を知っている程度のつながり。

図書委員としてのポスター作りをふたりでやった。



そこではじめて、彼の美術の才能を知った。
夏川千早という人間に興味を持った。

でもそれは、誰にでも向けるような、そんなもの。


そして彼も、わたしの名前を知ったのは多分そのときが最初。









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