【完】『轍─わだち─』
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台風の時期には珍しい快晴となったこの日、パティシエの兼康彬とモデルの森島つばさの婚約の披露宴と、祖父の傘寿のお祝いを兼ねた、華々しいパーティーの席が設けられていた。
会場は鎌倉である。
鎌倉駅から少し段葛を海へ下がった材木座の浜とほど近い界隈に、かつて外国人教師の屋敷であった洋館が建っている。
庭園の広葉樹の樹の間隠れに、真っ赤な屋根を聳えさせており、大正の頃に建てられた当時、横浜の女学校で教鞭を執った、
──キャンベル先生の家。
と土地の故老からは呼ばれていた。
幸い鎌倉の町は空襲らしい空襲がなかったからか、こうした建物はちらほらある。
平成の今。
少し古びてはいるが、キャンベル先生が好んだアメリカのアンティークの鏡台や椅子が、木造の白く塗られた内装の調度によく映えていた。
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