【完】『轍─わだち─』
しかし。
「英語やイタリア語には敬語がない」
と言われてしまうと、誰も反駁する余地がない。
もともとハッキリものを言う性分であるところにきて、例の彼氏の煙に巻く手法まで感化で身につけたのだから、
「あれでバラエティの仕事、また増えるよ」
などと、マネージャーあたりは指摘するのである。
「いいなぁ、仕事あって。私なんかバラエティでも上手く切り返せないから、所詮は彬みたいなボンボン捕まえて玉の輿に乗るぐらいしか、手段がないんだよねぇ」
つばさはこぼした。
そういうところでは。
まりあは玉の輿に乗る選択ではなく、自らも稼ぎつつキャラクターを活かした仕事のやり方を持っているようで、
「ああなりたいとは思わないけど、キャラクターを活かせるようにはなりたいなぁ」
とはつばさ自身、痛々しいまでに強く感じていたところではあったようである。