【完】『轍─わだち─』
店を出た三人は、石段を降りた先の砂浜へ出た。
既にシーズンは過ぎている。
七里が浜には犬の散歩をさせている婦人や、制服姿のカップルがまばらに見えるばかりで、人は少ない。
「夏は海水浴ってだけで、あんなに混むのになぁ」
まりあは小さくひとりごちた。
まだ昼過ぎだというのに陽の傾きは早い。
わずかに秋の陽が縮まるのが、つばさの肌には感じられた。
「ね、つばさはさ、アッキーのどこが気に入ったの?」
まりあの問いに、つばさはすぐには答えられないでいる。
「それは無理な質問だろう」
耀一郎は笑いながら、
「だいたいまりあだって、同じことを訊かれたら答えられるのかい?」
「私は即答できるよ」
まず優しくて、オシャレで、私と身体の相性がよくて…とまりあは指を折りながら数えてみせた。