【完】『轍─わだち─』


その日の夜。

耀一郎が新川崎の部屋に戻って、取り寄せの余りの干物を肴にチビチビやってると、

「今日はごめんなさい」

とつばさからメッセージが着いた。

耀一郎は返信が早い。

気に入りの萩焼の酒器を片手に、

「気にしなくていいです。むしろ溜め込むのは良くない」

と返事を出した。

少し、間があって。

「ありがと、耀さん」

絵文字がついていたので、耀一郎はそれ以上のことは深く追わずに、

「取り敢えずこれからお風呂だから」

と、やんわりとした会話の切り方をした。

つばさから見ると。

それは耀一郎なりの気遣いであり、実は物凄く頭脳を使って周囲に波風を出来る限り立てないように生きている風にも見えた。

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