【完】『轍─わだち─』
つばさは内心はかなり動悸がしていたが、
「うん分かった、ひとまず仕事終わったら連絡するね」
そう切ってから、いわゆる食レポと呼ばれる撮影が始まった。
共演者に感づかれないかどうかが気掛かりではあったが、
「この刺身おいしいですね」
などとコメントを増やすことで、目をそらすことには取り敢えず成功した。
チェックも済ませるとマネージャーのもとへ駆け寄って、
「マネージャーさん、確か明日は移動日だよね?」
頼み込んで、早い新幹線を押さえてもらい、その日は宿で仮眠を軽くとってから、ほとんど時間らしい時間も取れないまま、金沢駅を出発したのである。