【完】『轍─わだち─』

つばさは内心はかなり動悸がしていたが、

「うん分かった、ひとまず仕事終わったら連絡するね」

そう切ってから、いわゆる食レポと呼ばれる撮影が始まった。

共演者に感づかれないかどうかが気掛かりではあったが、

「この刺身おいしいですね」

などとコメントを増やすことで、目をそらすことには取り敢えず成功した。

チェックも済ませるとマネージャーのもとへ駆け寄って、

「マネージャーさん、確か明日は移動日だよね?」

頼み込んで、早い新幹線を押さえてもらい、その日は宿で仮眠を軽くとってから、ほとんど時間らしい時間も取れないまま、金沢駅を出発したのである。



< 30 / 72 >

この作品をシェア

pagetop