【完】『轍─わだち─』
東京駅に着くとさくらが、大輔と二人で迎えに来ていた。
「つばささんでもどこ行ったか分からないなんて、お兄ちゃんったら考えられない」
不機嫌さを隠さないさくらを、大輔が何とかなだめながら過ごしていたようであった。
「何か、お兄さんはここは行くかもみたいな、思い当たる場所って知らないですか?」
大輔が訊いた。
「あんまりアッキーは出掛けたがらないからなぁ」
つばさは答えた。
二人で過ごすときはたいがい、蒲田のつばさの部屋でゆっくり過ごす場合がほとんどで、食事も蒲田の餃子屋であったり、川崎の焼肉屋ぐらいであったりする。
「川崎の行きそうな焼肉屋は、あらかた探したんですけどね…」
「そもそも何でいなくなったの?」
まずつばさはそこが分からなかった。
「もしかしたら、こないだパパと喧嘩したのは知ってるんだけど、あれかな?」
「喧嘩?」
あの怒らない彬が喧嘩、ということだけでもつばさは驚いた。