【完】『轍─わだち─』

翌日。

穣は連行された。

モデルのフィアンセの失踪という事案は、ついに逮捕者まで出る事件にまで、規模が拡大したのである。

果然。

馬車道の店はしばらく閉鎖を余儀なくされた。

ちょうどクリスマス商戦の直前であったために、

「あれでは持たないのでは」

と揶揄されるほど、経営は傾き始めた。

弘明寺の御殿は百合子とさくらだけになり、男手がなくなったことで電球の交換すら難渋する始末で、

「大輔くん悪いね」

「いや、困ったときはお互いさまですから」

と、何かと大輔に頼るようになっていった。



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