【完】『轍─わだち─』
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金の切れ目が縁の切れ目、と百合子は踏んでいたようだが、
「でも一緒にいることがさくらの幸せなら、自分は純粋にさくらを幸せにしたいと思ってます」
と返ってきた大輔の返事を聞いた百合子は、
「彼なら見込みがある」
と値踏んだようで、
「それなら、さくらのことお願いしようかしら」
と言い、ゆくゆくは弘明寺の家を二人に譲る路線も、百合子には浮かんでいたらしかった。
そうした折。
失踪中の彬の消息が知れた、というので、百合子からつばさに連絡が回ってきた。
が。
つばさは彬の一件で、出ていたレギュラーの番組は全て降板となり、出ていたコマーシャルも自粛といったかたちに追いやられていたのもあって、
「仮に彬が戻ってきても、つばさちゃんにこれだけの迷惑をかけた訳だから、結婚はなかったことにするより仕方がないわよね」
と、百合子の方から婚約の解消を言い出す始末であった。