【完】『轍─わだち─』
弘明寺に戻ると百合子はさくらと大輔に、銀行での件を話した。
すると大輔は、
「僕の学生時代のバイト先の知り合いに、探偵がいるんで、調べてもらいますか?」
と返した。
少しいぶかしい話にはなったが、百合子もそれしかないと考えたのか、
「じゃあそうしてちょうだい」
との話で、その場はそれで終わった。
それから間もない時期、さくらはこの話を、つばさに漏らした。
「だってさぁ、そんな訳の分かんない人なんかほっとけばいいのに、探偵なんか使って探すんだよ」
もう縁なんか切れてるはずなのに、とさくらは大輔と百合子の行動に違和感を感じたらしく、
「こんなんだったらお兄ちゃんみたいに外国に行けばよかった」
とこぼした。