【完】『轍─わだち─』

その頃。

まりあはイベントのゲストとして、企業の新商品の発表会に呼ばれた。

その席でまりあは記者たちからの囲み取材を受け、

「例の彼氏とのゴールインはいつぐらいになりそうですか?」

と訊かれた。

まりあは、

「そんなの分からないですよー」

と笑いながらあしらったが、つばさが巻き込まれた兼康家の話題になると、急にトーンを下げた声に変わって、

「さぁねー、どうなるんでしょうね。私は関係ないんでいいんですけど、知り合いの子なんか、もう疲れたってボヤいてたし」

と、暗にさくらの話題にふれた。

「なんか探偵雇って嗅ぎ回ってるのがいるとか、裁判と相続でお金がないから、その子は彼氏とうまくいかなくなったとか」

なんかよくある話を言ってましたよ、とまりあはリップサービスついでのコメントを残したのである。

この話は、結論からいうと翌日の新聞をにぎわせた。

「メディアって勝手だからねー」

とまりあは言ったが、これで問題になったのは探偵を雇っていた大輔の言動であった。

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