【完】『轍─わだち─』
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そのようにして。
最後に大輔は、耀一郎に優勝を逆転でさらわれた。
「奇跡の大逆転」
とも呼ばれ、関係者の間で語り草になっている伝説であったが、
「あれは掟破りではないのか」
という議論が出て、以後は敗者復活戦の廃止や、弁論での着替えの禁止、質問を客席に投げ掛ける行為が禁止になるなど、新しくルールが付加され明文化された。
いわばルールの変更をするきっかけになった…という事件でもある。
このときをきっかけに大輔は、芸能事務所への内定を取り消された。
いっぽうで。
大逆転で勝ったはずの耀一郎は、
「自分は表舞台に出る器ではない」
と言って、そのまま賞金を資金に中国へ水墨画の留学に行ってしまい、芸能事務所を失望させたという逸話が残されている。
以来、大輔は自ら会社を立ち上げ、上場まで成り上がったときには、
「イケメン社長のサクセスストーリー」
と騒がれるまでなった。
かたや耀一郎は華やかな世界には見向きもせず、たまたままりあと知り合ったのも、美術展のサポーターに選ばれたまりあに、専門家として耀一郎がついたからに過ぎない。