【完】『轍─わだち─』
大輔と耀一郎、どこまでも対照的な二人であろう。
今度は。
相続で争う…というのは、格好の週刊誌のネタにもなった。
むろん読者が主婦だけに大輔を贔屓する記事が多数で、耀一郎を庇護する記事は皆無に近い。
が。
ここでも。
耀一郎は奇手を繰り出した。
「相続権を放棄する」
といい、さっさと手続きを取ってしまったのである。
これにはまりあが、
「ダァってバカじゃないの!?」
と思わず面罵したが、
「悪いけど、僕は誰とも戦わないと決めてある」
とだけ言った。
「ミスターキャンパスのときも、あれは弁当がタダで出るというから出た。だから勝ち負けは考えてもなかった」
とも言い、これが拡散されると、
「無欲な辻、貪欲な高杉」
という図式が、形成されていったのである。