【完】『轍─わだち─』
こうなると。
大輔は梯子を外された姿になり、
「またやられた」
とだけ言うと、人前から行方をくらましてしまった。
それまでコメンテーターとしてあちこちの番組にも出ていたが、潮が引いたように本数がなくなって、
「世間はそういうものさ」
と、メディアに顔を出さなくなった。
これをあとで人伝に聞かされたさくらは、
「なんか大ちゃんってセコい」
という言葉を残して、すっかり幻滅したものか、大輔との連絡を嫌うようになった。
ここで。
耀一郎は勝利を宣言しても良かったのだが、
「まぁ、終わればノーサイドですから」
とだけ言って、新川崎へと引きこもった。
まりあとの入籍を発表したのは、さらにあとになってからである。