【完】『轍─わだち─』
つばさは訊いた。
「他に何かやりたかったの?」
「あぁ、ホントは音楽とかやりたかったさ」
確かに。
つばさが彬と知り合ったのも、彬の幼なじみがベーシストをしていたバンドのライブのときである。
そのバンドのプロモーションビデオにつばさが出演し、それが縁でライブに顔を出したのが始まりであった。
「そういえばアッキー、ちょっとだけギター弾けたよね」
「まあね」
つばさも最初は彬を、ミュージシャンだと思っていたらしい。
しかし。
本業がパティシエと知り、そのギャップが気になったのもあったらしかった。