【完】『轍─わだち─』
ところで。
売却された馬車道の店についてであるが、これは買い取った業者が最初そのままケーキ屋として開いたが、ほどなくつぶれて、その後は家具屋、宝飾品屋、洋服屋と居抜きで入れ替わり立ち代わりで入ったが長続きせず、最後は華僑が買って洋風のゲストハウスにし、現在に至る。
それにひきかえ。
弘明寺の御殿は売られたあとしばらく買い手がつかず、しばらくして不審火で全焼し、跡形もなくなった。
放火、とも言われたが証拠はない。
さらにしばらくして更地になったが買い手はなく、一年以上空き地になったあと、大手の不動産屋が買ってプレハブ工法のメゾネットハウスにしたが、駅から少し遠い割に家賃が高く、入居の率が悪いといった理由で格安で叩き売りに出され、今は私立の大学が学生会館にしている。