君への轍
京都東インターから名神高速道路に乗り、しばらくしてから晃之が口を開いた。

「阿弥ちゃん、びっくりせんといてな。……あけりちゃん、けっこう近い親戚らしいわ。」

「は?」

徳丸部長は、突然、晃之が何を言い出したのかよくわからなかったようだ。

ぽかーんと運転中の晃之を見て、それから後部座席のあけりを振り返った。

あけりは、渋々うなずいた。

「え?」

徳丸部長は、それを見て、眉間に皺を寄せて首を傾げた。


「あけりちゃんが葵祭に来てはったん、俺も見た。たくおっちゃんの元カノに似てるなーって、何となく見てたら……ほんまに、おっちゃんと元カノの子ぉやったって聞いて、びっくりしたわ。」

たくおっちゃん……吉永さんって、学校では「たっくん」で、甥っ子には「たくおっちゃん」なんだ……。

親しみやすい人柄なのか……年相応の威厳がないのか……。


「母の顔って……逢ったこと、あらはるんですか?」

ミラー越しに、晃之とあけりは視線を合わせていた。

「あるで。小学生の時やけど。……それに、たくおっちゃん、あれでかなり女々しいロマンティストやから、元カノの写真とか捨てられへんねん。……元カノにあげるはずやった指輪も未だに蔵にあるわ。」

晃之は片頬だけ上げて皮肉っぽく笑った。


「……ご結婚されなかったんですか?」

あけりがそう尋ねると、晃之は肩をすくめた。

「しはったで。いろいろあって……おっちゃん本人が好きになったヒトとは上手く結婚まで漕ぎ着けへんことが重なったから、おばあちゃんが、せんどお見合いさせはって、やっと結婚しはってんけどな、あっちゅう間に離婚しはったわ。」

「……それじゃ、お子さんは……」

「いいひん。……せやし、あの家は俺が継ぐことになっててんけどな。ここに来て、あけりちゃん登場ですわ。」

ギクリとした。


徳丸部長も、驚いて振り返った。

「え……濱口さん、継いでくれるの!?」


……継いで……くれる?……くれる?なの?

もしかして、晃之さんも、部長も……あのお家を継ぎたくないの?

やっぱり旧家って恐ろしく大変なのかしら。



あけりは、ぶるんぶるんと大きく首を横に振った。
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