君への轍
疑うべくもない、本気の想い……。

既に「好き」と言われてるし、まっすぐな薫の愛情は疑うべくもない。

でも、あけりの将来に、夢より不安のほうがはるかに多いことを知っても、それでも変わらずに居てくれる……。

あけりの瞳に溜まった涙が、頬をつたって落ちて……耳に流れ落ちてく……。


「……私も……好きです。……ごめんなさい。」

「え……何で謝るん?」

薫は一瞬あけりを観て、慌ててまた前方を観た。

……高速道路じゃなきゃ、路肩に停まりたいところだ。


あけりは自分でゴシゴシと涙を拭ってから、薫の太ももにぐりぐりと頬ずりした。

競走を終えたばかりのパンパンに張った太ももの感触が気持ちよかった……。


……もっとも、薫は再び股間の疼きを必死で抑えねばならず慌てたが。


もぞもぞと不自然な動きを見せた薫に、さすがにあけりも気づいた。

慌てて、薫の膝から起き上がると、助手席に座り直して、それから薫の首に両腕を回してしがみついた。

「めんどくさい女で、ごめんなさい!身体も!家庭環境も!……生まれも!育ちも!……薫さんに迷惑いっぱいかけて、ごめんなさい!」

今のあけりにできる精一杯の気持ちの表現だった……。


薫の胸がつまる。

……あけりちゃんのせいじゃないのに……。

仕方ないことなのに……あけりちゃんが謝る必要、ないのに……。

「……なんも。……ひとっつも、あけりちゃん、悪くないやん。……むしろ、聞かせてくれて、うれしい。俺にも、あけりちゃんのしんどさを分けてくれるんやろ?一緒に、いてもいいんやろ?」


改めてそんな風に確認されてしまうと、うなずけない。

……やっぱり、しんどい……よね……。

あけりはするりと、薫から離れた。


けど、すぐに腕を掴まれて、引き戻された。


「あかんて。放す気ぃないから。……しんどくないなら、ずっとそうしとき。」

「……う……けっこう……しんどい……この姿勢……。」

遠慮がちにそう言うと、やっと薫は放してくれた。

「ごめん。……寝とき。」

「……はい。……ありがとう。」

あけりはそう言って、再び助手席にもたれた。



気がつくと、また、あけりの手が薫の服の裾を引っ張っていた……。
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