君への轍
翌朝、何となく大丈夫そうだったので、あけりは普通に起きた。
心配そうな、そして、何か言いたそうな母のあいりをスルーして、いつものように継父の車に乗り込んだ。
「……ママ、心配してるから……、いつでもいいから、話してやってな。」
何もかも承知しているような、穏やかな継父の言葉に、あけりは素直にうなずいた。
「うん。……パパさんは、薫さんが競輪選手でも……反対しない?」
すると継父はふっとほほ笑んだ。
「……わしは、ちょっと前から気づいてたからなあ……。……泉さんの弟子やろ?」
ギクリとした。
そこまで知られていたのか。
……まあ、薫は家のすぐそばで車を停めるので、乗降中を継父に見られていたとしても不思議ではない。
抜かりない継父のことなので、ナンバープレートから薫の氏素性を調べることぐらいはとっくに済ませているのだろう。
「いつから……知ってたの?」
「新学期入ってすぐ?……彼はエエ子やからかまへんねんけどな……あけりちゃんがどういうつもりかわからへんかったから、様子を見てたんや。」
……そんな前から……。
あけりは、ため息をついてから、継父に苦笑して見せた。
「正直なところ、私にもよくわからかへんかったの。薫さんの競走は好きだったし、ファンだったけど……実際に逢うようになったら、お人柄も……イイヒトだし……。」
「そうやなあ。あんな好青年に迫られたら、ほだされるわなあ。……まあ、ええんや。あけりちゃんが、泉さんに近づくために水島さんを利用してるんやなかったら。」
チクリと、継父に釘を刺されてしまって……あけりはうつむいた。
「……そんなつもりは……ない……。むしろ……しょーりさんにバレた時……薫さんの立場が悪くならはらへんか……。」
半分嘘だった。
今でこそ、薫主体に考えているけれど、最初のうちは……薫の向こう側に泉の存在を感じていたことは否めない。
「それは、大丈夫やろ。水島くんなら。……泉さん、退院しはるみたいやな。宮杯に、無理矢理、出場しはるんか?」
「……うん。そのつもりでリハビリしてはるみたい。……しょーりさんが復帰しはったら……一度、逢いに行ってみようと思う。……聡くんが、ついてきてくれるって。」
あけりの言葉に、継父は笑った。
「なんや、それ。そこで水島さんやのうて、東口さんの聡くんなんかいな。……そうか~。よかったなあ。あけりちゃん。親身になってくれるお友達、増えたなあ。」
継父にそう言われて、あけりは多少の気恥ずかしさを感じつつも、開き直ってうなずいた。
心配そうな、そして、何か言いたそうな母のあいりをスルーして、いつものように継父の車に乗り込んだ。
「……ママ、心配してるから……、いつでもいいから、話してやってな。」
何もかも承知しているような、穏やかな継父の言葉に、あけりは素直にうなずいた。
「うん。……パパさんは、薫さんが競輪選手でも……反対しない?」
すると継父はふっとほほ笑んだ。
「……わしは、ちょっと前から気づいてたからなあ……。……泉さんの弟子やろ?」
ギクリとした。
そこまで知られていたのか。
……まあ、薫は家のすぐそばで車を停めるので、乗降中を継父に見られていたとしても不思議ではない。
抜かりない継父のことなので、ナンバープレートから薫の氏素性を調べることぐらいはとっくに済ませているのだろう。
「いつから……知ってたの?」
「新学期入ってすぐ?……彼はエエ子やからかまへんねんけどな……あけりちゃんがどういうつもりかわからへんかったから、様子を見てたんや。」
……そんな前から……。
あけりは、ため息をついてから、継父に苦笑して見せた。
「正直なところ、私にもよくわからかへんかったの。薫さんの競走は好きだったし、ファンだったけど……実際に逢うようになったら、お人柄も……イイヒトだし……。」
「そうやなあ。あんな好青年に迫られたら、ほだされるわなあ。……まあ、ええんや。あけりちゃんが、泉さんに近づくために水島さんを利用してるんやなかったら。」
チクリと、継父に釘を刺されてしまって……あけりはうつむいた。
「……そんなつもりは……ない……。むしろ……しょーりさんにバレた時……薫さんの立場が悪くならはらへんか……。」
半分嘘だった。
今でこそ、薫主体に考えているけれど、最初のうちは……薫の向こう側に泉の存在を感じていたことは否めない。
「それは、大丈夫やろ。水島くんなら。……泉さん、退院しはるみたいやな。宮杯に、無理矢理、出場しはるんか?」
「……うん。そのつもりでリハビリしてはるみたい。……しょーりさんが復帰しはったら……一度、逢いに行ってみようと思う。……聡くんが、ついてきてくれるって。」
あけりの言葉に、継父は笑った。
「なんや、それ。そこで水島さんやのうて、東口さんの聡くんなんかいな。……そうか~。よかったなあ。あけりちゃん。親身になってくれるお友達、増えたなあ。」
継父にそう言われて、あけりは多少の気恥ずかしさを感じつつも、開き直ってうなずいた。