君への轍
参列者は近しい親戚だけのつもりだった。

でも、聡たち一家、なぜか吉永の親族も駆け付けた。

そして、ひと目につかないように……というか、あいりと目を合わさない程度に離れたところで、泉も見守ってくれていた。


とてつもなく急な話だったし、正直なところ、これでいいのかよくわからない。

でも、あけりは、幸せだと思うことにした。


大好きな泉が、大好きな薫との仲を取り持って強引に進めてくれた。

大好きな薫のご両親も反対せず、大好きなあけりの両親が喜んで祝福している。

大好きな人達に囲まれて……あけりは、この日を一生忘れない……と、何度も目を赤くした。


その都度、薫が優しく涙を拭ってくれた。



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新婚旅行は、バリ島に飛んだ。

プライベートビーチのあるブルガリリゾートホテルに4泊。

初日は水着姿を見せるのも恥ずかしがったあけりだったが、薫の愛に包まれて、夜も昼も抱き合い愛を交わすと、3日めには専用のプールで裸でじゃれることもできるようになった。

薫にとって、どんなみずみずしいフルーツよりも、あけりの白い身体が美味しくて美味しくて……一生飽きることはないだろうと思えた。



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日本に帰ると、薫の生活環境はガラッと変わった。

練習バンクも、毎日走り込む街道も馴染みのない新しい場所だ。

でも街道練習には、聡が同行して、案内した。


本当はあけりも一緒に走りたかったけれど……、やはり自転車は無理だろう。

来年絶対車の免許を取ろうと、堅く決意した。



あけりは、薫のために料理を習い、栄養学を勉強した。

少しでも薫の練習がはかどるように……薫の成績が上がるように、協力を惜しまなかった。



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夏休みが終わり、二学期に入った。

体育祭の応援合戦の練習と、同時進行で文化祭の準備が始まった。

あけりは、特に役にもついていなかったし、忙しい想いをすることはなかったが……クラスと部活で準備を手伝った。


そのせいだとは思いたくない。

しかし、ちょうど文化祭の前日、設営を手伝っている時に、あけりは激しく咳き込んだ。

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