君への轍
「……嘉暎子さん、オトナなのね。……私は完全に、コドモ。」

あけりと薫との年の差は10。

でも、そんな年の差よりも大きいのは、やはり、異性との交友関係の経験値だろう。

こればかりは、背伸びのしようがない。


「逆よりいいじゃないですか。かわいいと思ってらっしゃいますよ。」

嘉暎子にそうなだめられ、あけりはますます自分の子供っぽさを痛感した。




思ったより早く、昼休みが終わってしまった。

お弁当は食べ切れなかったけれど、5時間目の授業中にこっそりとあけりは薫に連絡を取った。



<夕べ宝ヶ池に居合わせた後輩とその彼氏さんが、薫さんのお車に興味があるそうです。放課後、来るそうですので、よろしくお願いします。>


なかなか既読にならないところを見ると、練習中なのだろう。

師匠の泉勝利と一緒だろうか。

考えると胸がざわついてくる……。

あけりは携帯を鞄にしまって、授業に集中した。


6時間目の直前にようやく薫からの返事が書き込まれた。


<了解。2シートじゃなきゃ、ドライブにでも連れてってやんだけど。近場でどこかある?一緒に夕飯とか、どう?>


……もしかして……ちょっとテンション上がってる?

端的な言葉だけど、薫がノリノリなことが伝わってきた。


<ありがとうございます。後輩の彼も車で来るそうです。夕食は、お返事、後でいいですか?聞いてみます。>


<了解。あけりちゃんのお家には、部活の先輩後輩と食べるって言えば反対されないんじゃない?アリバイにさせてもらえば?これからも。>


……ああ、そういうことか。

確かに、部活自体も便利なアリバイになりそうだ。

やっぱりオトナだわ。




終礼が終わるとすぐ、嘉暎子がやって来た。

担任の徳丸が驚いていた。

「え……もう仲良くなったん?あれ?……濱口、まだ部活来てへんのに?……藤田、社交的やなあ。」

……確かに、まだ部活に顔を出してなかったわ。

やっぱりゴールデンウイークに観能させてもらうべきかもしれない。

「ふふ。私たち、同志なんでーす。」

嘉暎子の言葉に、徳丸は目を細めてほほえみ、あけりは引きつった。


……何の同志なのだろう?

年の差彼氏同盟?

よくわからないけれど……シンパシーを感じてくれてるようなので、まあ、いっか。
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